予約表を共有カレンダーに移す作業そのものに、大した時間はかかりません。うまく回るかどうかは、その後に決める約束ごとで決まります。カレンダーは予約の重なりを見せてくれますが、鍵を誰が持っているか、ガソリンがどれだけ残っているかまでは教えてくれません。
事務所のホワイトボードに「社用車 午後 田中」と書く運用は、外出先から見られないことと、消し忘れが残ることが弱点です。紙の予約表も同じで、予約したい時にその場まで行く必要があります。共有カレンダーにすると、スマホからでも空きが見えて、その場で予約できます。ここでは、移す時に決めておくことを、予約する物の整理から順に書きます。
予約できる物を並べる
最初に、予約して使う物を全部書き出します。会議室、応接室、社用車、プロジェクター、貸し出し用のノートパソコン、測定器や工具。社員が取り合いになる物、使う前に誰かに聞いている物が対象です。
そのうえで、予約できる物ごとにカレンダーを1つずつ作ります。社用車が2台あるなら、カレンダーも2つです。1つのカレンダーに全部の予約を入れると、件名を読んで「これは白い車の分」と見分けることになり、重なりを見落とします。カレンダーの名前は、社員全員が同じ物を思い浮かべる呼び方にします。車ならナンバーの下4桁や色、会議室なら部屋の場所で呼ぶと迷いません。
Google Workspaceを使っているなら、管理者が会議室やプロジェクター、社用車を「リソース」として登録でき、社員は会議に人を招待する時と同じ操作で、会議室や車を予定に加えられます(Google Workspace 管理者ヘルプ「カレンダー リソースとは」)。登録には管理者の権限が要るので、社内で誰が登録と削除をするかも決めておきます。リソースの機能が無いサービスでも、物ごとに共有カレンダーを作り、社員全員に予定の追加を許可すれば、同じ形で回せます。
カレンダーを誰に見せるかも、作った時に確かめます。件名にお客様の名前を書くことがあるなら、そのカレンダーが社外に公開されていないか、共有の相手が社員だけになっているかを見ておきます。共有の設定は後から見直す人が少ないので、最初に決めた範囲がそのまま何年も続きます。
反対に、見せる範囲が狭すぎて困ることもあります。後で書くように鍵やガソリンのことを予約の説明欄に書いてもらうなら、その説明欄を他の社員が開けるかを確かめてください。Googleカレンダーには「予定の表示(時間枠のみ、詳細は非表示)」という共有の権限があり、この権限だと予定がある時間枠しか見えず、件名も説明欄も読めません(Google カレンダー ヘルプ「カレンダーを共有する」)。社員の1人に自分のスマホで開いてもらうのが早い確かめ方です。
予約の決まり
カレンダーを作っただけで公開すると、1か月先まで毎日押さえる人や、件名が空の予約が出てきます。最初に決めておくのは、次のようなことです。
- 件名には使う人の名前と用件を書く(例: 山本 お客様打ち合わせ)
- 何日先まで予約できるか
- 1回に押さえてよい長さと、それを超える時は誰に断るか
- 他の人の代わりに予約してよいか
- 繰り返しの予約(毎週の定例会議など)を入れてよい人
2と3は、取り合いが起きている物だけ厳しくすれば十分です。空いていることが多いプロジェクターに細かい決まりを付けると、面倒で予約されなくなり、元の口約束に戻ります。
決まりはカレンダーの説明欄と、社内のチャットの目立つ所に置きます。紙に印刷して掲示しても、予約する時に見るのはスマホの画面です。
前もって予約していない会議室に、空いているからとそのまま入るのは構いません。ただ、入る前にその場でスマホから予約を入れてもらいます。入れてから使う。これが習慣になると、打ち合わせの最中に別の人が予約して、ドアを開けて鉢合わせすることがなくなります。
ダブルブッキングの防ぎ方
重なりが起きやすいのは、予約の入口が2つある時です。共有カレンダーに移した後もホワイトボードを残していると、片方にだけ書いた人が出ます。切り替えた日にホワイトボードの予約欄は消し、予約は共有カレンダーだけで受けると全員に伝えます。
次に、使うサービスで、重なった予約をどう扱うかを確かめます。同じ時間に予約が入った時に自動で断る設定があるか、あっても最初から有効になっているかは、サービスや設定によって違います。管理者の説明ページを読むだけでなく、試しに同じ時間へ2人で予約を入れてみてください。後から入れた予約がどうなるかを、運用を始める前に自分の目で見ておきます。
それでも重なった時の決め方も必要です。先に入れた人を優先する、お客様との予定を社内の予定より優先する、など1行で決めておけば、当日の言い合いが減ります。

キャンセルの扱い
予約の取り消しは、決まりにしないと誰もやりません。使わなくなった予約が残っていると、他の人は空いている会議室を諦めて、狭い応接室で打ち合わせをすることになります。
決めるのは、使わないと分かった時点で予約を消すこと、それだけです。消し忘れが多いなら、開始時刻から一定の時間が過ぎても使われていない予約は、他の人が使ってよいことにします。この決まりがあると、予約だけして使わない人への注意も言いやすくなります。
繰り返しの予約は、月に1回、入れた人に見直してもらいます。とっくに終わった定例会議が毎週の枠を押さえ続けていることがあります。
鍵とガソリンの受け渡し
社用車と会議室には、カレンダーの外にある物が付いてきます。鍵と、車ならガソリンです。
鍵の置き場所は1か所にします。鍵掛けでもキーボックスでも構いません。使った人は、返した時刻を自分の予約の説明欄に一言書きます。次に使う人は、自分の予約の直前に入っている予約を開いて、その一言を確かめます。自分の予定を開いても前の人の書き込みは見えないので、ここは手順として伝えておきます。持ち帰ってしまった時にすぐ分かりますし、次の人が鍵を探して社内を歩き回ることがなくなります。
ガソリンは、残りがどこまで減ったら入れて返すかを決めます。半分を切ったら入れる、というように目盛りで決めると迷いません。給油の支払い方法(会社のカード、立て替え)もここで一緒に決めます。会社の給油カードを使うなら、鍵と同じ場所に置き、使ったことを同じ説明欄に書いてもらいます。立て替えにするなら、経費精算の流れにつながります。
車の傷や警告灯、プロジェクターの映りの悪さのような不具合は、予約の説明欄とは別に、車や備品ごとの記録表を1枚用意してそこに書きます。説明欄は予約の日が過ぎると誰も開きませんが、記録表なら直るまで同じ場所に残り、同じ不具合が何度目かも分かります。記録表は、カレンダーの説明欄からリンクしておくと探さずに済みます。書かれた不具合を直す人は、車や備品ごとに1人ずつ割り当てます。
社用車の台数によっては、法令で決まっている記録もあります。警察庁の安全運転管理者制度の概要では、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使う事業所ごとに安全運転管理者を選ぶことになっています(バイクは1台を0.5台と数えます)。台数は会社全体ではなく、拠点ごとに数えます。その業務には、アルコール検知器を使った運転者の酒気帯びの確認と記録の保存、検知器をいつでも使える状態に保つこと、運転日誌の備え付けと記録が含まれています。これにあたる事業所は、予約カレンダーとは別に、その記録と検知器をどこに置くかを決めておきます。予約の説明欄は書き方が人によってばらつくので、法令で求められる記録の代わりにはしないほうが安全です。
最初の1か月の見直し
始めて1か月ほどたったら、カレンダーを見返します。予約せずに使われた日はあったか、使われずに残った予約はどれくらいあったか、鍵やガソリンの書き込みは続いているか。守られていない決まりは、実態に合っていないのかもしれません。守らなかった社員を責める前に、理由を聞いて決まりのほうを直します。
1か月分の予約が残っていると、社用車が本当に足りないのか、特定の曜日に予約が偏っているだけなのかも見えてきます。台数を増やす相談の前に、予約の偏りを一度見てください。
共有カレンダーは、社内の他の予定や、お客様からの予約受付とつなげて広げることもできます。どこまで広げるか迷う時は、DX推進・伴走支援のページも参考にしてください。



