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売上や問い合わせの表をAIに集計させる前に整えること、あとで検算すること

この記事の要点

AIに渡す売上や問い合わせの表は、1行1件・1列1項目にそろえ、合計行や結合セルを外し、個人情報を消してから渡す。そのうえで集計の手順を説明させ、元の表で数か所を手で検算する。氏名や電話番号などは列ごと消すか記号に置き換える。個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を入力する場合は利用目的の範囲内かを確認するよう注意喚起している。AIには答えと一緒に、どの列をどう絞り込んで数えたかを書かせ、合計と件数と特定の月の値を手元の表計算ソフトで出して照らし合わせる。

売上の一覧や問い合わせの記録をAIに渡すと、月ごとの合計も、商品別の順位も、問い合わせが多い曜日も、数分で返ってきます。表計算ソフトの関数を覚えていなくても、言葉で頼めば集計してくれるのは、たしかに便利です。

ただ、AIの集計の間違いは、足し算そのものより手前、表の読み方の段階でも起きます。合計行を1件のデータとして数えてしまう、日付の列を文字として扱ってしまう、同じ商品が表記の揺れで別の商品として数えられる。答えは自信のある書き方で返ってくるので、外れていても見た目では分かりません。

表を渡す前にやること、渡す時に頼むこと、返ってきた後に確かめることを、順に書きます。

渡す前の表の整え方

AIに渡す表は、1行に1件、1列に1項目の形にそろえます。人が見るために作った表は、この形になっていないことがよくあります。

  • 途中に挟まった小計行や、一番下の合計行
  • 見出しや月の区切りに使っている結合セル
  • 同じ意味の列が二つある(「金額」と「売上金額」など)
  • 「㈱」と「株式会社」、全角と半角など、同じ物の表記の揺れ

合計行が残ったまま「売上の合計を出して」と頼むと、合計を二重に足した数字が返ってくることがあります。表記の揺れは、商品別や取引先別に数える時に効いてきます。同じ取引先が三つに分かれて数えられていれば、上位の順位そのものが変わります。

もう一つ、列の名前は中身が分かる言葉にしておきます。「区分1」「フラグ」のような社内でしか通じない列名は、AIが意味を推測して読みます。推測が外れれば集計も外れるので、「問い合わせの経路(電話・メール・フォーム)」のように、何が入っているかが分かる名前に書き換えておくと安心です。

表を整えるのは手間ですが、一度整えた形を残しておけば、翌月からはそのまま使えます。

渡す列も絞ります。月ごとの売上を知りたいだけなら、日付と金額の二列があれば足ります。備考欄や担当者のメモのように自由に文章を書いている列は、集計には使わないことが多いのに、表を重くし、読み違いのもとにもなります。何を知りたいかを先に決めて、それに要る列だけを別のシートに写して渡すと、次に書く個人情報の心配も一緒に減ります。

行数が多い表は、期間で区切って渡すのも一つの手です。1年分を一度に渡すより、まず1か月分で頼んで検算し、読み方が合っていると分かってから全期間に広げる方が、どこで間違えたかを探す手間が小さく済みます。

個人情報の外し方

売上や問い合わせの表には、お客様の名前、電話番号、メールアドレス、住所が入っていることがあります。集計に必要ないなら、渡す前に列ごと消します。お客様ごとの件数を数えたい時は、名前の代わりに「顧客001」のような記号に置き換え、対応表は手元にだけ残します。

個人情報保護委員会は、2023年6月に生成AIサービスの利用について注意喚起を出しています。その中で、事業者が生成AIに個人情報を含む指示を入力する場合は、その個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認すること、本人の同意なく個人データを入力し、それが応答以外の目的で扱われる場合は法律に違反する可能性があることを挙げ、サービス側が機械学習に使わないこと等を十分に確認するよう求めています(個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」の別添1)。

入力した内容が学習に使われるかどうかは、サービスとプランと設定によって変わります。ただ、集計のためだけなら、そもそも名前も連絡先も要らないことがほとんどです。消せる物は消してから渡す、を基本にしておけば、設定の確認に迷う場面も減ります。

集計のやり方を説明させる

頼む時は、答えだけでなく、どうやって数えたかも書いてもらいます。「集計の答えと一緒に、どの列を使い、どんな条件で絞り込み、何を数えたか(または合計したか)を、手順として書いてください」と一言添えます。

左に行と列がそろった表の図があり、一部の列が黒く塗りつぶされている。中央の矢印の先に棒グラフが描かれ、右端では電卓と虫めがねが、表の特定のマスと棒グラフの一本を見比べている。
表を整えて個人情報を外してから渡し、返ってきた集計は元の表で数か所を手で確かめる。

手順が書かれていると、読み違いを見つけやすくなります。「日付の列から10月のデータを抜き出し」と書いてあれば、10月の範囲の取り方が正しいかを確かめられます。「キャンセルを含めて数えました」と書いてあれば、キャンセルを外すべきだったと気づけます。答えの数字だけを見ていても、こうしたずれは分かりません。

AIが表をどう読んで計算したかは、サービスや使い方によって違い、使う側の画面からは分かりにくいことがあります。手順を書かせるのはそのためですが、その説明もAIが書いた物です。説明と実際の計算が合っているかどうかは、次の検算で確かめます。

手で検算する場所

返ってきた集計は、全部を確かめなくて構いません。元の表から、少なくとも次の3か所を表計算ソフトで出して、AIの答えと照らし合わせます。

  1. 金額など、数値の列の合計(問い合わせの表なら、経路ごとの件数を足した値)
  2. 全体の件数(何行のデータを数えたか)
  3. 特定の1か月か1商品の値

1と2が合っていれば、AIが表の全体を読めている見込みは高くなります。3が合っていれば、絞り込みの条件も正しく効いていると考えてよいでしょう。どれか一つでもずれたら、ほかの数字もそのまま使わずに、手順の説明を読み直して、どこで読み違えたかを探します。

ずれ方から原因の見当がつくこともあります。件数が元の表より1件多いなら、合計行や見出しの行を数えている可能性があります。合計が元の表のほぼ2倍なら、合計行か小計行を足し込んでいる可能性があります。特定の月だけずれるなら、日付の書き方がその月だけ違っていないかを見ます。見当をつけたら、その点を指摘してもう一度集計させます。

検算は、表計算ソフトの合計と件数の機能が使えれば足ります。関数を一から覚える必要はなく、見出しの行を除いてデータの入った範囲だけを選び、画面の下に出る合計と個数を見るだけでも、1と2の確認はできます。表計算ソフトに慣れていなければ、印刷した表を電卓で足し直しても同じ確認になります。

数字と解釈を分けて読む

AIは、集計した数字から「火曜日の問い合わせが多いのは、週明けの対応が落ち着いたためと考えられます」のような解釈も添えてきます。数字の集計は検算で確かめられますが、この解釈は確かめようのない見立てです。

表には、その週に広告を出したか、担当者が休んでいたか、大口の取引先から一度にまとめて注文が入ったか、といった事情は書かれていません。AIはそれを知らないまま、もっともらしい理由を組み立てます。解釈は、現場の担当者が知っている事情と照らして、使えるかどうかを人が決めます。

使い方としては、解釈を答えとして受け取るより、確かめるべき問いの候補として受け取るくらいがちょうどよいと思います。「火曜が多い理由は何か」を社内で話すきっかけになれば、それで十分に役に立っています。

AIが一つの理由だけを言い切ってきた時は、ほかに考えられる理由と、それぞれを表のどの列で確かめられるかを挙げさせると、見立てが一つに固まるのを防げます。表で確かめられない理由が挙がったら、それは現場の人に聞くしかない問いです。誰に何を聞けばいいかが分かるだけでも、次の打ち合わせが短くなります。

毎月同じ集計をしているなら、表の整え方から集計、検算までを決まった手順にして、AIエージェント(AI社員)作成のように仕組みとして任せる方法もあります。AIを使わずに、スプレッドシートの集計を毎朝メールで自動送信する作り方は、毎朝の集計・日報メールを自動化するに書きました。

よくある質問

AIに渡す前に、表はどう整えればいいですか?
1行に1件、1列に1項目の形にそろえます。合計行や小計行、結合したセル、同じ意味の列の重複を外し、列の名前を分かりやすくしておくと、AIが表を読み違えにくくなります。
お客様の名前が入った表をAIに渡してもいいですか?
集計に名前が要らないなら、列ごと消すか記号に置き換えてから渡します。個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の範囲内かを十分に確認するよう注意喚起しています。
AIの集計結果は、どこを確かめればいいですか?
数値の列の合計、件数、特定の1か月の値の3か所を、元の表から表計算ソフトで出して照らし合わせます。合っていれば、AIが表を正しく読めている可能性が高いと判断できます。
AIが出した分析の結論は信じていいですか?
数字の集計と、そこから導いた解釈は分けて扱います。解釈は、表に無い事情を知らないAIの見立てです。現場の担当者が知っている事情と照らして、使えるかどうかを判断します。

この記事を書いた人

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芦刈 庸介

株式会社NewBeginnings 代表取締役

大分県出身。フリーランスを経て、2026年3月1日に株式会社NewBeginningsを設立。ホームページ制作、アプリ・業務システム開発、DX推進・伴走支援を、代表みずから手を動かして行っています。

芦刈 庸介の X(旧Twitter)

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