「見積書の最新版ってどれですか」「去年の契約書、どこに入れましたっけ」。共有フォルダがある会社でも、こういう質問は毎週のように出ます。ファイルはあるのに見つからない、見つかっても同じ名前違いが3つ並んでいてどれを使えばいいか分からない。探す時間は1回数分でも、聞かれた人の手も止まります。
原因はたいてい、フォルダの分け方やファイル名の付け方が、作った人の頭の中にしかないことです。人によって「取引先ごと」に分けたり「年度ごと」に分けたりするので、同じ種類の書類が別々の場所に散らばります。ここでは、決めることを少なく絞って、明日から回せるルールの作り方を書きます。
置き場所の一本化
分け方の話の前に、確かめておきたいことがあります。仕事のファイルが、本当に共有フォルダに入っているかどうかです。
実際には、作りかけの見積書は担当者のデスクトップに、取引先から届いた図面はメールの添付に、現場の写真は LINE のトークに残っている、という形で散らばっていることがよくあります。この状態で共有フォルダだけをきれいにしても、探し物の半分は別の場所にあるので「見つからない」は減りません。
決めることは1つで足ります。「完成したもの」と「取引先とやり取りしたもの」は、その日のうちに共有フォルダへ入れる。作業中のファイルまで縛る必要はありません。メールの添付や LINE の写真も、仕事で使うものは保存し直すところまでを作業の一部に数えます。
フォルダを分ける軸
最初に決めるのは、共有フォルダのいちばん上の段(第1階層)を何で分けるかです。候補は業務の種類、取引先、年度あたりですが、おすすめは業務の種類です。「見積」「請求」「契約」「採用」「会議」のように、その書類を使って何をするかで分けます。
理由は、ファイルを探す人が思い浮かべるのが「いま何の仕事をしているか」だからです。請求書を探している人は、まず請求のフォルダを開きます。取引先で分けると、取引先が増えるたびに第1階層が長くなり、年度で分けると毎年同じ構造をもう1組作ることになります。取引先や年度は、2段目以降で使えば十分です。
分け方以外に、決めておくと後が楽になることが2つあります。
- 階層は3段まで。それより深いと、保存する人がどこに入れたかを覚えていられません
- 並び順を固定したいなら、フォルダ名の頭に「01_見積」「02_請求」と番号を付ける
逆に作らないほうがいいのは、第1階層の個人名フォルダと「その他」フォルダです。個人名のフォルダは担当者が辞めた瞬間に中身が分からなくなり、「その他」は迷ったファイルが全部流れ込んで、いちばん大きなフォルダに育ちます。どうしても仮置き場が要るなら「未整理」という名前にして、月に1回空にする日を決めておきます。
ファイル名に入れるもの
ファイル名は、並べる順番を決めるのが先です。おすすめは次の順番です。
日付_相手_内容_版
たとえば「20261001_山田商店_見積書_v2」のような形になります。先頭を日付にしておくと、フォルダの中を名前順に並べたときに、そのまま時系列になります。
日付の書き方はルールの中でいちばん大事なところで、年から書いて、月と日は必ず2桁にします。「2026.9.5」と「2026.10.1」を名前順に並べると、文字として比べるので10月のほうが9月より前に来てしまいます。「20260905」「20261001」と桁をそろえておけば、この逆転は起きません。区切りを入れたいなら「2026-10-01」でも構いませんが、社内でどちらか1つに決めてください。
入れない方がいいものもあります。
| 避けたい名前 | ルールに沿った名前 |
|---|---|
| 見積書_最新.xlsx | 20261001_山田商店_見積書_v2.xlsx |
| 議事録(修正版)最終.docx | 20260928_定例会議_議事録.docx |
| 契約書 山田さん確認済み.pdf | 20260915_山田商店_業務委託契約書_締結版.pdf |
「最新」「最終」「修正版」は、書いた瞬間は正しくても、次の版ができた時点で嘘になります。「最終_修正2_本当に最終」のような名前が生まれるのはこのためです。確認した人の名前やスペースも、ファイル名ではなくファイルの中や送信記録に残すほうが確実です。なお Windows では 「\ / : * ? " < > |」の記号がファイル名に使えないので、区切りはアンダーバーかハイフンにそろえておくと迷いません。

古い版の置き場
版の管理で決めるのは、古い版をどこに置くかだけです。いちばん簡単なのは、業務のフォルダには最新の1つだけを置き、それより前の版は「旧版」という名前の下の段へ移すやり方です。フォルダを開いたときに見えるのが1つだけなら、どれを使うか迷うことはありません。
Google ドライブや OneDrive のようなクラウドの保存先を使っているなら、同じファイルを上書き保存して、前の版は版の履歴から戻すこともできます。ファイルが増えないので一番すっきりしますが、履歴を残す期間や数に上限があるサービスもあります。長く残したい版は、使っているサービスの設定を一度確かめておいてください。
取引先に送ったものだけは別扱いにします。送った版はPDFにして「送付済」の段に入れ、後から上書きしないと決めておくと、「あのとき何を送ったか」を聞かれても答えられます。
ルールを守ってもらう工夫
ルールは作るより守ってもらうほうが難しいです。長い規程を配っても、忙しい時期にはまず読まれません。
おすすめは、ルールをA4用紙1枚に収めて、共有フォルダのいちばん上に「00_はじめに読む」という名前で置いておくことです。中身は、フォルダの分け方の図と、ファイル名の見本を3つか4つ。説明文より見本のほうが、そのまま真似してもらえます。
見積書や請求書のひな形がある業務なら、ひな形のファイル名自体をルールの形にしておくのも手です。「YYYYMMDD_相手_見積書_v1」という名前で置いておけば、使う人は日付と相手を書き換えるだけで済みます。
それから、見回る人を1人決めておきます。月に1回、10分ほど共有フォルダを開いて、ルールから外れたファイルを直すだけです。外れたファイルを作った人を責めないことも大事で、責めると共有フォルダに置かずに自分のパソコンへ保存する人が出てきます。そうなると、探す場所がかえって増えます。
最初から全部を整理しない
ルールを決めたとき、多くの人が過去のファイルも全部付け直そうとします。これはおすすめしません。数千のファイルを1つずつ開いて日付を確かめる作業は、通常業務の合間には終わらず、途中で止まったまま新旧のルールが混ざった状態が残ります。
線は今日に引きます。過去のファイルは「旧_2026年9月まで」のようなフォルダに丸ごと移して、中は触りません。探すときは検索を使えば、たいていは見つかります。新しいルールは、今日から作るファイルにだけ当てはめます。
3か月ほど使うと、分け方の合わないところが見えてきます。「会議」フォルダが大きくなりすぎた、取引先ごとに分けたほうが早い業務があった、といった点です。そこで一度だけ直せば十分で、最初の案が完璧である必要はありません。
共有フォルダの整理は、どの業務でどんな書類が行き来しているかを見直すきっかけにもなります。書類の流れそのものを見直したくなったら、DX推進・伴走支援のページも参考にしてください。



