AIは、入れた瞬間から賢いわけではありません。正確に言うと、モデル自体の賢さは各社が更新してくれますが、「あなたの会社のことを分かっているか」は、使う側が積み上げるしかないのです。この記事は、その積み上げが実際にどれくらいの差になるのかという話です。
「94」という数字の話——ただし、これは測定値ではありません
当社の代表が、日々使っているClaudeに聞いてみたことがあります。「育てた度合いを1から100で表すと、いくつ?」。返ってきた答えは、「初めて入れた状態が1なら、この環境は94」でした。
ここは正直に書きます。この94は測定値ではありません。AIが会話のなかで答えた自己申告で、採点基準もなければ、ほかの環境と比べたわけでもありません。数字そのものを真に受けないでください。
それでも紹介したのは、「同じ製品を入れているのに、環境によってまるで別物になる」という感覚が、この一言によく表れているからです。数字が要るなら、自己申告ではなく実体を数えたほうが確かです。次でそれをやります。
実際に積み上がっているものを数えてみた(2026年9月8日時点)
当社の1台に、いま何が積まれているのかを数えました。
- ルール(毎回読ませる決まりごと):17ファイル・約9万5千字
- 記憶(過去の判断・事故・前提を1件1ファイルで残したもの):5,868件(同日時点。日々増えます)。うちコーポレートサイト担当分が1,048件
- スキル(決まった作業の手順書):82件
- フック(作業の前後で自動的に走る検査):37本
- 専門エージェント(役割を持った担当):34体
- 自作コマンド:100本
※これは当社1社の運用実績です。一般的な目安ではありませんし、多ければよいというものでもありません。
積み上がると、何が変わるのか
1. 同じ指示でも、出てくるものが違う
「ブログを1本書いて」とだけ伝えたとき、対応エリアの書き方、使ってはいけない言い回し、過去に代表が却下した表現を、こちらが言わなくても踏まえた原稿が出てきます。初期状態では、そのどれも知りません。同じ一言でも、返ってくるものの完成度がまるで違います。
2. 同じ失敗を2回しない
事故が起きたとき、記録に残すのは「何が起きたか」ではなく「なぜ気づけなかったか」です。たとえば「検査は動いていたのに、対象がその範囲の外にあった」といった形。これを1件ずつ残しておくと、次からは同じ形の落とし穴の手前で止まるようになります。
3. 「たぶん直った」で終わらせなくなる
育っていない状態のAIは、直したつもりで報告してきます。育てた環境では、実際にコマンドを打って、その出力を貼るところまでを作業の一部にできます。ここが業務で使えるかどうかの分かれ目です。
今日からできる育て方3つ
専門知識は要りません。1人の会社でもできます。
- やり直させたことを、その場で書き留める。「この言い方は使わない」「この場合はこう判断する」を1行ずつ。これが一番効きます
- 会社の事実を1か所にまとめて渡す。価格、対応エリア、よく使う言い回し、断るときの文面。毎回説明しなくて済むようになります
- 3回やった作業は手順書にする。手順書にしておくと、次からは「あれをやって」の一言で同じ品質が出ます
育てているのは「AI」ではなく「AIに渡す前提」
ここが本質だと思っています。モデルそのものは各社が更新するので、こちらでは育てられません。育てられるのは渡す前提のほうです。だからモデルが新しくなっても、積み上げた前提はそのまま効きます。
逆に言うと、前提を積まないまま新しいモデルに乗り換えても、出てくるものは大きくは変わりません。「最新のAIにしたのに期待ほどではない」と感じる会社の多くは、モデルではなくこちら側に理由があります。
まとめ
- 「94」は自己申告であって測定値ではない。数字より、積み上がった実体を見るほうが確か
- 差が出るのは、ルール・記憶・手順書・検査の蓄積
- やり直させたことを書き留める/会社の事実を1か所に/3回やった作業は手順書に、の3つから始められる
- 育てているのはAIではなく、AIに渡す前提
「うちの会社の前提を、どこからまとめればいいのか」でつまずく方が多いところです。大分県内の企業さま向けに、業務の棚卸しからルールづくり、社内で回る形に落とすところまで一緒に進めています。詳しくはAI導入・DX支援のページをご覧ください。



